「FLEE」を観てきました。
これからご覧になる方のために
ネタバレをさせないように
気を付けつつ、
感想を語りたいと思います。

いきなり結論ですが、
この映画が伝えようと
していることは
「受容」
なのかと、勝手に解釈
してみました。

タイトル「FLEE」の意味は
“逃げる”。
そのタイトルどおり
主人公は母国から”逃げ”ます。
また、自身の性的指向からも
”逃げよう”とします。
そして、自分を満たそうとする
愛にも尻込みをします。

この映画は
ドキュメンタリーです。
難民である主人公の身に
危険が及ばぬよう
ほとんどがアニメーションで
時々、過去の映像が実写で
入る独特な構成の映画です。
主人公アミンが
親友である映画監督の前で
自身の壮絶な過去を
時おり苦しみを堪えながら
訥々と語っていきます。
内戦により国が荒れ、
人々の心は荒み
地獄のようです。
同じ世界で起きている
悲惨な現実を
何となく知ってはいても
改めて映像で見て、
私は胸が痛みました。
それでも、
製作者側の配慮なのか
凄惨なシーンも
あからさまにはせず
かなりソフトに表現
してあります。
衝撃的な映像頼みではない分
観る側に
深く考える余裕ができ、
じわりと染みてくる感じ。

そしてなぜ
「受容」なのかというところ
ですが、それは
私の一番心に残ったシーンに
象徴されます。
主人公アミンには兄弟姉妹が
いて、アミンは末っ子。
長男はもともと国を離れ
仕事をしていて、家族の亡命
のためにお金の工面をするなど
何かと
手助けしてくれていました。
父親が行方不明なので
実質家族を支えてくれて
いたのです。
その長男が暮らす家に
主人公アミンが辿り着き
先に逃げた姉2人とも
再開できたのです。
そして食事をしながら
たわいない会話をする中で
アミンは隠し続けてきた
秘密を告白しました。

これを知ったら家族に
嫌われると悩んでいた秘密。
瞬間場は凍り付き
饒舌だった長兄も
押し黙ります。
その直後、
長兄はアミンを車で
ある場所に連れていきます。
その場所とは‥。

この後の出来事がまさに
「受容」
瞬間、アミンの心にあった
“詰まり”のようなものが
スルッととれた気がしました。
単に、私が無意識に息を止め
ホッとして
力が抜けただけかも
しれませんが。

主人公アミンは
幼少期の壮絶な体験により
深く気づ付き
難民であるがゆえに
今も完全に安心を得たわけでは
ありません。
そして、家族への愛、感謝、
自分に注がれてきた家族からの
愛への負い目など、
複雑で根が深い思いを
抱えているのです。
それでも、
自分の過去を受容し、
自身の個性を受容し、
他者からの愛を受容し、
生きていく。

パワフルで
エネルギッシュな
逆転ストーリーなんかでは
ない分、
深く、優しく
人間が生きるということを
味わえる作品だと
感じました。





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投稿者について

柔道整復師&パーソナルトレーナー&フィットネスインストラクターです。筋肉、骨、関節を中心に健康に関する情報をあれこれ、読書好きなのでお勧めの本を紹介したり、韓流ドラマ好きなので感動したら思わず感想を書いてしまうこともあるかもしれません。どうぞよろしくお願いします。

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